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「市」のこと

水曜日, 2月 29th, 2012

去年の暮に「時代劇が沢山見られる様に」と、テレビの設定をやり替えてもらいました。おかげで、大昔の懐かしい時代劇から最近のNHK大河ドラマに至るまでのあらゆる分野の時代劇が常時見られるようになり、毎日楽しい時間を過ごしております。これ等の中でも気を引くのが「鬼平犯科帳」「剣客商売」「陽炎の辻」等等です。中でも特に面白いのが、故勝新太郎の監督主演で創られた「座頭市物語」であります。1月頃までは「座頭市物語Ⅰ」シリーズとして放送されていましたが現在は「座頭市Ⅱシリーズ」としてBS8CHで毎週月曜から金曜日まで午後3時から放送されております。この他に「時代劇専門CH」でも週遅れながら毎日放送されております。この「市」なる人物、生れ付きの全盲のあんまさんで、仕込み杖の達人でもあります。生れて間もなく親に捨てられて、いつの間にか自身が「やくざ」になってしまい、日本全国を当てもなく彷徨い旅をしております。その旅の途中で知り合った人達との交流や、土地の悪いやくざとの絡みで「已む無く仕込み杖を使って悪いやくざを切りまくる」と言う、毎回同じ様な展開のドラマですが、毎回違ったゲストスターを迎え、違った筋書きのドラマが用意されており、見る者の目を引きつけます。特に圧巻なのが「大勢の悪いやくざに取り囲まれて立ち回る」所謂「殺陣」の迫力は何度見ても飽きないし、素晴らしい迫力だと思って見ております。また、「市」が時折見せるコケティッシュな仕草も親しみが持てるのです。旅館や山や河原や、茶店等での食事時の表情や起居振舞など、よくぞあそこまで盲目の人の日常の姿を観察し、取り込んだものだと感心させられます。石ころだらけの河原道や峠の難所、橋を渡る時などに見せる「ガニマタ歩き」のユーモラスな姿など、ともすると暗くなりがちな画面に一筋の光を当てているようで、製作者の姿勢が伝わって来て救われるのです。画面がクローズアップした時の「目の表情」や「子供達と話す時」と「悪いやくざと話す時」の声の使い分け等、この役者がこのドラマを創るまでにやってきたであろうあらゆる努力が並大抵のものではないなと、感心するのです。私が若い頃、「目あき盲目の女」を主人公にしたドラマが有った事を覚えておりますが、あちらの方は主人公が女性で有ったという制約なども有り、画面から受ける迫力や殺陣のスピード感や盲目の人の所作振舞などの点で、遥かにこちらの「市」の方が勝っていると思われます。それは、詰る所、「勝新太郎」と言う人の人と成り、役者魂から発散される「愛すべき魅力」のせいなのかもしれません。唯、このドラマを見ていて気になる事が二つ有ります。その一つは、「市」の体力が途轍もなく強いこと、あれだけの立ち回りをやって居ながら息一つ乱れていないこと、何時、何処で体や技を鍛えているのかという事。もう一つ気になる事は「毎回切られて死んでいく悪いやくざ」の人数が余にも多い事、一回で平均「悪い親分以下10人位」は斬り殺されております。やくざの間での懸賞金も百両に値上がりして来ました、この百両が現代で換算して幾ら位になるのか見当もつきません。一回に10人位ですから一週間で約50人、一か月で約200人、一年で2400人の人を殺している計算になります。如何に「悪いやくざ」でもこんなに殺して仕舞っては・・・と気になるのです。これが現代だったら、さしずめ「大量殺人犯人で全国指名手配」と言うところでしょうか?。そうは言っても、「座頭市」はやっぱり面白い!!