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「迷い猿」の報道のこと

月曜日, 9月 20th, 2010

最近日本の各地の住宅街で「野生の猿」らしい「迷い猿」が出没して、民家の中や庭先に入り込んで、偶々出逢わせたその家の人に噛みついて傷を負わせたと言うニュースが新聞やテレビで報道されております。地域の人達が色々知恵を絞って捕獲に懸命ですが、必死で逃げ回る猿はなかなか捕まらない様です。私が気になったのは、この捕獲作業をカメラで追っかけて報道しているテレビレポーターの言葉です。曰く「史上最強の猿、今日も人を噛む」「悠然と屋根から屋根へ移動」などの表現です。何かの理由で民家近くに迷い込んだ猿が、大勢の人間に追い回されて、それこそ命からがら逃げ回っているのです。捕まったら殺されるかもしれないと言う恐怖心に駆られて文字通り「必死の体で逃げている筈である」ことは、テレビ画面を通してしか見ていない私にも容易に想像できるのです。そこには心の余裕などは微塵も無い筈だし、ましてや眼下で右往左往している人間共を屋根上から悠然と見下ろす余裕などこの猿には絶対にないと推察されます。にも関わらず件のレポーターは、「史上最強の猿」とか「悠然と移動中・・・」とかまるで何処かの戦場にでも居て報道している様な表現です。捕まりたくなくて必死で逃げずり回っている猿が、偶々出っくわした人を噛んで逃げたからと言って、それが如何して「史上最強の猿」に為るんでしょうか。何に対して、誰と比べて「史上最強」なのでしょうか?、何時代のどんな歴史と比較して「史上最強」になるのでしょう?。民家の周りを走り回って、目を吊り上げて上ずった声で叫び続けているレポーターの間の抜けた表情がむしろ滑稽に思えてなりませんでした。「史上最強」等と言う言葉は、こんな場面で使う言葉では無い筈です。レポーターならば、どんな場面に有っても常に冷静で客観的な観察をして報道すべきであり、自分がその雰囲気に呑み込まれて、気持が上ずってしまったならば、正確な現場の模様を、テレビを見ている人達に伝える事等、絶対に出来ないと考えます。テレビカメラの向こうには常に大勢の視聴者の目や耳が有るんだと言う事を片時も忘れないで対応してもらいたいし、視聴率を上げようと言う狙いかも知れませんが、以後このようなセンセーショナルな言葉を安易に連発する事は厳に慎んで欲しいと思うのです。