定年退職後、毎年仲間と続けている行事の一つに「北陸地方での蟹食旅行」があります。北陸の温泉ホテルに部屋を取り、そこから車で約四十分位かけて蟹料理屋へ出かけ、時間をかけて蟹料理を食べてホテルへ帰ってくるという、文字通りの「蟹食い旅行」です。今年は仲間の都合が中々折り合わず、例年よりもかなりう遅くなって三月の終りに行ってきました。客間へ通されて待っていると、例年の通り全て蟹で造られたお料理が次々とテーブルに並びます。刺身から焼き蟹、天ぷら、茹で蟹、蟹雑炊等等・・・・。刺身以外の料理は蟹の甲羅が赤いので、食卓がとても賑やかな雰囲気になり、仲間の話も弾みます。唯、蟹を食べ始めると、お互いの会話は極端に少なくなって、ただ黙々と蟹を食べていきます。部屋には各自が蟹の殻を突っつく音や殻から剥き出した蟹の身を啜り込む音だけが響いています。日頃お喋り好きな人も、この時ばかりは全く静かで、しみじみと蟹の味に舌鼓を打っているようでした。世の中には色々な食べ物があって色々な食べ方が有り、夫々に特色が有りますが、蟹を食べる時だけ、どうしてお互いの会話が少なくなってしまうのでしょうか?この様な経験、私だけなのかなあ。ともあれ、今年も腹いっぱいの蟹を食べて満足して帰ってきました。